この記事では、生活保護受給中に債務整理する方法や注意点、デメリットなどを詳しく解説します。
生活保護を受けているけれど、借金が返せないと悩んでいませんか?
生活保護受給中でも、借金の問題を解決する方法はあります。
生活保護費で借金返済をすることはできませんし、新たに借り入れをすると生活保護が打ち切られる可能性があります。
その悩みを解決する方法が、債務整理なのです。
債務整理は有料の手続きですが、費用をおさえたり、免除にできる方法もあります。
ぜひ、参考にしてください。
借金があっても生活保護を受けることはできますが、生活保護費から借金の返済をすることはできません。
借金の返済は、生活保護の目的に反すると考えられるからです。
また、生活保護受給中に新たに借金をすることも、禁止されています。
借金をすると、その分保護費が減らされたり、生活保護が打ち切られたりする可能性があります。
借金をなくすためには、債務整理という手続きをする必要があります。
債務整理とは、裁判所や弁護士などの専門家の協力を得て、借金の額や返済方法を変更したり、免除したりすることです。
債務整理には、自己破産、任意整理、個人再生、特定調停などの種類があります。
自己破産とは、裁判所に申し立てをして、借金を全て帳消しにすることです。
自己破産をすると、借金の返済義務がなくなり、生活保護を受け続けることができます。
自己破産には、弁護士費用や裁判所費用などの費用がかかります。
しかし、法テラスという公的機関を利用すれば、費用を安く抑えたり、分割払いにしたり、免除してもらったりすることができます。
任意整理とは、債権者と直接交渉して、借金の利息を減額またはカットしてもらい、元本のみを分割返済することです。任意整理には、裁判所を介さないので、費用や手続きの期間が比較的少なく済むというメリットがあります。
個人再生とは、裁判所を介して、借金の総額を大幅に減額してもらい、分割返済することです。個人再生には、住宅ローンなどの特別な借金を除いて、借金を1/5~1/10程度に減額できるというメリットがあります。
特定調停とは、裁判所の調停委員の仲介で、債権者と借金の減額や分割返済について合意することです。特定調停には、任意整理と同様に、債権者を選択できるというメリットがあります。
生活保護受給中にできる債務整理は自己破産だけというのは、次のような理由からです。
生活保護費は借金返済に充てられない
生活保護は最低限度の生活を保障するために支給されるものであり、借金返済のために支給されているわけではないからです。
生活保護費で借金返済をすると、不正受給に該当する可能性があり、生活保護法に違反して生活保護を受けることで、刑事罰や返還請求などの処分を受けることがあります。
新たな借金をすると生活保護費が減額される
生活保護法により、生活保護受給者が借入れを行うと「収入」と見なされ、生活保護費は減額されることになってしまいます。
任意整理や個人再生は返済の必要があるため難しい
任意整理や個人再生は一定の収入があることが前提となっており、生活保護受給者が条件を満たすのは難しいからです。
自己破産には、メリットとデメリットがあります。
以下、それぞれ4つずつ紹介します。
借金が免除される
自己破産の最大のメリットは、借金が全額免除されることです。
借金の返済義務がなくなるので、返済に苦しむことがなくなります。
債権者からの取り立てが止まる
自己破産の手続きを開始すると、債権者は強制執行や督促をすることができなくなります。
電話や郵便での催促もなくなるので、精神的なストレスが軽減されます。
一部の財産は残せる
自己破産では、すべての財産が処分されるわけではありません。
生活に必要なものや一定額以下の現金や預貯金は手元に残すことができます。
誰でも申し立てできる
自己破産は、収入や職業に関係なく、誰でも申し立てることができます。
無職や生活保護受給者でも、自己破産をすることが可能です。
信用情報に事故情報が登録される
自己破産をすると、信用情報機関に事故情報が登録されます。
事故情報が登録されると、7~10年間は新規のローンやクレジットカードの申し込みができなくなります。
また、既存のローンやクレジットカードも利用停止になる可能性があります。
財産が処分される
自己破産すると一部の財産は残せますが、それ以外の財産は処分されます。
特に、住宅や車などの高額な財産は競売にかけられてしまいます。
その場合、住宅に住んでいる家族も引っ越しを余儀なくされます。
保証人に迷惑がかかる
自己破産をしても、保証人の債務は免除されません。
債務者本人は借金がなくなりますが、保証人は債権者から請求され続けます。
保証人が家族や友人の場合は、大きなトラブルになる可能性があります。
職業や資格に制限がかかる
自己破産をすると、一部の職業や資格に就くことや取得することができなくなります。
例えば、警備員や保険外交員、弁護士や税理士などの士業などが該当します。
自己破産をする前に、自分の職業や資格に影響がないか確認する必要があります。
自己破産には3種類の手続きがありますが、一般的には「同時廃止事件」という手続きが多くなっています。
同時廃止事件の手続きの流れは以下の通りです。
この手続きには、以下のような書類が必要になります。
これらの書類は、弁護士に依頼すれば作成してもらえますが、必要な資料は自分で用意する必要があります。
同時廃止事件の場合、申し立てから免責許可までの期間は平均して8~10ヶ月程度です。
自己破産の費用は、裁判所に支払う費用と弁護士に支払う費用の2つがあります。
自己破産にかかる費用は、自己破産の手続きの種類によってことなりますが、30万円から130万円程度です。
自己破産の費用が払えない場合は、法テラス(日本司法支援センター)の利用がおすすめです。
法テラスは、経済的に余裕のない方に無料で法律相談を行い、弁護士費用などの立替えを行う制度です。
法テラスを利用するメリットは、以下のとおりです。
法テラスを利用するには、以下の流れで手続きを行います。
生活保護受給中に借金の返済や借入をすると、以下のような問題が起こります。
借金の返済は生活保護費からはできません
生活保護費は最低限度の生活を維持するために使われるべきであり、借金の返済に充てることは不正受給とみなされます。
借金の返済は生活保護受給者には義務ではありません
生活保護受給者は、債権者からの差押えや取り立てを受けない特別な立場にあります。
借金は生活保護受給者にとって不利です
生活保護受給者が借金をすると、その金額は収入として認定され、生活保護費の支給額が減らされます。
債務整理後に生活保護を受ける場合、以下の点に注意してください。
債務整理の種類によっては、生活保護の申請ができない場合があります。
例えば、個人再生や特定調停では、裁判所に申し立てをして借金の減額を求めますが、その際に裁判所から一定期間の返済計画が認可されます。
この返済計画に従って返済を続けることが義務付けられるため、生活保護の申請ができなくなります。
債務整理の結果、過払い金が発生した場合、その金額は収入として認定されます。
そのため、生活保護の申請をする前に、過払い金を生活費に充てる必要があります。
また、過払い金の受け取りを福祉事務所に申告しないと、不正受給として処罰される可能性があります。
債務整理の結果、免責が認められた場合、その旨を福祉事務所に報告する必要があります。
免責が認められると、借金の返済義務がなくなるため、生活保護の支給額が変更される可能性があります。
生活保護受給中でも債務整理は可能であり、なかでも自己破産が有力な選択肢となります。
生活保護費で借金返済をしたり、新たに借り入れをしたりすると不正受給となるので注意してください。
法テラスを利用すれば、自己破産の費用を抑えることができます。
お近くの弁護士事務所で相談してみてください。